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第83回 「レバランの壁」
Author : セルナジャヤ 森
Posted: 2012-06-15 00:00:00 | Category: 時事速報インドネシア
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第83回 「レバランの壁」

第83回 「レバランの壁」 
 人材の採用活動を行っている企業にとって、早期の勤務を求める場合に大きな壁となって立ちはだかるのが、「レバラン(イスラム断食明け大祭)の壁」です。今年は8月19~20日の2日間が該当します。
 とある日系メーカーの日本人社長は「レバランを迎える前に候補者へ勤務開始を求めても、レバラン後にしてほしいという要望が強く、他の候補者に当たってみても同様の回答で困った」ということで、今後の計画が大きくずれ込むことを懸念していました。
 果たして、レバランの壁とは何なのでしょうか?
 
 ◇レバランには“THR”が関係する
 会社としては一刻も早い勤務開始をと、採用予定者に「今年の7月や8月初旬」からの勤務を求めても、当の候補者は「現在勤務する会社からは8月になれば“THR(大祭手当)”が支給されるため、THR受給前の退職は避けたい」と難色を示すことがあります。また、中には、「現在の会社で本来受けるTHRの分を肩代わりしていただけるのであれば、早期の勤務開始は可能」とまで言う候補者もあるのです。
 
 ◇レバランは日本の正月と似た概念である
 イスラム教徒は、断食月(今年は7月半ばから8月18日までの約1カ月間)を乗り越えた後の大祭であるレバランを最大の楽しみとし、故郷の家族に、給料や貯蓄の大半を費やしてでも家電製品や衣料を買い与え、わずかな休暇期間を家族とぜいたくに過ごそうとする習慣があります。そのためレバラン前後はインドネシアで最も消費が増えるといわれ、大祭前に支給されるTHRは帰郷の際の交通費やぜいたく品を買いそろえる貴重な“財源”ともなります。
 これが日本では、「年末ボーナス」を受給しての「正月休み」という点で似ており、ボーナスの受給権利を前にして退職をする日本人はそういないと思われます。
 
 ◇レバランのおさらい
 レバランは別名イドゥル・フィトリとも呼ばれ、カレンダー上では2日間だけ国が定めた祝日となります。ただし、帰郷を果たそうとする従業員の強い希望もあり、実際のところはその前後1週間から2週間にかけて会社が特別な休暇とすることが多く、イスラム教徒にとって1年の最大のイベントであるとも言えます。
 
 ◇レバラン前に支給されるTHRのおさらい
 THRとは、Tunjangan  Hari Rayaの略語で、労働法にて定められた、会社が全従業員に支給する大祭手当です。受給条件としては、以下の3つがあります。
 1.勤続1年間を満たした従業員は、少なくとも固定給1カ月分を支給される
 2.勤続3カ月間以上、1年間未満の場合は勤続期間に応じ支給される
 3.正社員の場合、大祭を迎える30日前以内に退職する場合は受給権利を持つ
 
 これまでの経験上、最終的には候補者側の言い分を通し、レバラン後の勤務開始とするケースが多いですが、インドネシア人従業員としては、レバランを境に転職動向が活発化していくとされ、レバランは転職の契機となる一方、企業側としてみればTHRという出費も重なり、最もつらいイベントのひとつとも言えるでしょう。

 

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